残照の中のつまらない対話/道草次郎
。
自分はこれからどうなるのだろうか。まず初めに頭に浮かんだのは、それだった。目を瞑っていた。冷たい風が耳の脇を通り過ぎたが、その風を追いかける次なる寒風がまた耳を擽った。
暗く冷たい場所に、自分の中のもう一人の自分は立っていた。
その自分は云った。
「世の中には、明るく愉快な、想像力に満ちた世界が拡がっている。お前だってつい二日前までは、ペンローズを引っ張り出してワクワクしてそれを眺めていたし、セノーテやインカの遺跡、知床の生態系を本当に愛していただろう」
僕はその声を随分遠くから聴いた気がした。一番遠い場所、たとえば観測可能な宇宙の突端から。そして細胞の共鳴においてそれ
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