残照の中のつまらない対話/道草次郎
達していた。
こういう心向きには愉しさが欠落しているな…、と思いながら俯き茂る下草へと歩を進める。秋の夕闇のとば口に立つと、風の冷たさで七分袖の先の皮膚が粟立つ。何かの芯が微動している…それを、感じていた。
刻一刻と暗色を加えていく秋のパレットの上を歩いていく。脛をやわらかに窘める短丈の草の鞭。右頬にかすかに纏い付く蜘蛛の意識。鼻孔に佇む雨上がりの青草の馨り。
そういうものの感覚を一つひとつ味わうように感じつつ、畑の端まで行ってみる。そこで立ち止まり、来た叢と家屋の方を振り返ってみる。電灯が北と西の二か所にともり、もはや残照は白いモルタル壁に弱々しい陽を届けるばかりになっていた。
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