残照の中のつまらない対話/道草次郎
 

 本を見ていたら、ふと夕焼けの気配が気になった。勝手口から外に身を圧し出してみる。すると、その音に驚いた鳶が畑の近くの草地から、ぶわっと飛び立つ。
 気象現象については詳しくないが、台風が日本列島の南洋へと回れ右した事と夕焼けの色とは関係があるのだろうか。柚子のような黄色味を帯びた光が雲雲へと放たれ、その黄金の照り返しと鼠色の陰翳とが西空に渾融していた。
 綺麗、というよりも寧ろいささか妖しく不気味で、しかし、それは美しかった。浄土なるものがあるとしたら、その空の色味はきっとこんなだろうかと、そんな事を考えた。猛禽類とは名ばかりの思いのほか臆病であったかの鳥は、既に残映の遥か高みへと達し
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