人体実験/ただのみきや
 
ネズミ

ネズミが死んでいる
毛並みもきれいなまま
麻酔が効いたかのように横たわり
玄関先のコンクリートの上
雨に濡れて隠すものもない
死んだネズミは可愛らしく
人に害など決して与えない
童話の中のやさしい動物か
ビーズの目鼻を縫い付けた
よく出来たおもちゃのようにも見えた
あの欲求と運動
引っ切り無しに揺らめいた
生命現象の鎮火により
じっくり鑑賞できるのだが
果たしてこれは
死を枕にすやすや眠るネズミそれとも
ネズミの中でまだ寝ぼけ眼の死なのか
するといつもの煩いがやって来る
まるで季節の挨拶でも交わした後
こちらの出方を待っている
問うような
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