天国はここ、って歌ってたやつもここからはいなくなったし/ホロウ・シカエルボク
 
一番愚かなことは
放課後の中で学んだ
一番美しいもののことは
禁忌の中で学んだ
一番罪深いものは
日常に転がっていた
一番悲しいものは
自室の本棚で震えていた

引戸の滑りが駄目になったのは
小さな傷のせい
出て行こうとするたび
咎めるような音を立てる
かかとを鳴らしぼくは出て行く
休日の
兵士のような
中途半端な気難しさで

チャイコフスキーの悲愴が
頭の中に張り付いてる午後
時代の中にはいないものを
おざなりな
現実を鼻で笑うためのものを

土に還れない
蝉の死骸を蹴飛ばしてしまう瞬間
ぼくは
侵略者の後悔を知る
そんな話をしたって

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