16歳、使用済み下着愛好家の心/花形新次
使用済みの下着にしか
性的興味が湧かない
しかし、それを手に入れることは
至難の業だ
今穿いているホッカホカのパンティを
譲ってくれる人は少ない
いてもお金が掛かる
私の性の行き場所は
この世の中の何処にもないことに
気付いた
それでも
私は下着泥棒だけはしなかった
したくなかった
それは犯罪だから
私は使用済み下着のことを
思いながら
「性的少数者の中でも
更に少数者の私のような人間は
決して省みられることはないのだ」と
諦めにも似た気持ちを抱いている
秋、干した下着の乾きが
気になり始める季節
私は
マンションのベランダを
視界に入れるか
入れないか
ギリギリのところで
悩みながら
今日も通学路を
独り歩いている
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