他人の車/道草次郎
試みるのだろうか。蟷螂の斧。なんの意味もないかも知れない。それでもぼくはこうするより他にしようがない人間だ。大人たちはみんな色々な事が済んだ後の生を生きている。少なくともそう自分には見える。ぼくは自分のやっていることが大人のする事とは全然思えないが、全体の中では別に取り立てて言う程の存在でも無い気もする。ただ目の前にあるものの輪郭を手で撫でたい子どもなのだ。なぜそうするか。自分には動かせる手があり、目の前には触れる何かがあるからだ。
どうにも、ひとりの人間のすることは複雑なのか単純なのかよく分からないものだ。ただ一つ言えるのは、自分を肯定しない空の下にいまだ生きたためしがない、というあっけらかんとした気持ちが胸にあるっていう事ぐらいだろうか。
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