他人の車/道草次郎
あまたこの匂いか、と。ああまたこの匂いなんだな、と。そう思う事でなんとか自分を落ち着かせていく。いつからかそんな事ちっとも考えなくなる日もくるかも知れないとすら思ったりする。そういうのをあんまり気にしない人と楽しく車でお喋りなんかするようになるかも知れない。自分もだいぶ角が取れてきたななんて思ってみたりするかも分からない。
でもぼくは、どんなに自分が色々な事に慣れてしまったとしても、自分の車に誰かを乗せる時はこういうことを言うんだろうと思う。
「気楽にしてください。しばらくは窓を開けておきますよ。ところで、おかしな事を言うと思われるかもしれないが、この車の匂いは元を辿れば外の地球の匂い
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