庭の話など/道草次郎
 
わなわなとなるような宵口にふと玄関を出て、庭へと続く飛び石の方に行く。暗がりに咲く孔雀草やジニア。白い花を咲かせるシュウメイギクの細いうなじのような茎。そういった花々の姿に、近頃、心奪われることがあるというだけの話だ。
 あまりに何もかもが変わり過ぎたここ最近の事々に追いつくように、花々も樹木も、その身にしんしんと秋を刻み付けつつあるようにみえる。そこにあるものがただ美しい、それだけなのである。父もやはりそうではなかったか。美しいと感じることに理由など要らない。歳月が自分を父に似せたのか、それとも、父が歳月を自分に送って寄越したのか、それはどちらにしても同じことだろうか。
 ただ季節は一時も止まることなく、こうしている間にも冬の足音は近づいている。もしかしたら、花木を愛するというのはその季節の音を聴く事と似ているのかも知れない、そんな風に考えたりもするのだ。


戻る   Point(2)