秋耕と幻想/道草次郎
参りますが、涼しければ涼しいで、この有様ですから、本当にもう救いようがないというか情けがない。暫し逆さまの鍬を杖がわりに佇んで居た始末です。
昨夜からの、安閑とした心地を以て俳句を作ろうとしていたあの気分は、秋風とともに芒やエノコログサの茂った方へ無残にも散って行ってしまったわけです。なんということもない。これが、ほんとうというものだと首肯すると同時に、汗のかわいていくその道筋を見つめていると、次第に、もやもやしたあの気分が再燃して来るのもまた事実でした。心臓が早鐘をやめた頃には、つらいドライアイも収束し、自分が耕した二畳ほどの黒土の細部細部に気がいくようになるまでになりました。そんな自分
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