秋耕と幻想/道草次郎
これは、不当な態度ですね。しかし、虫たちに対するこういった不当な気持ちを隠すことは、少なくとも自分にはなかなか難しい事です。
そして、黒土の表面に所々頭を突き出す夏野菜の残滓。それは朽ちた茎やら殆ど見えないぐらいの葉やらですが、時々、干乾びたミニトマトもそれに加わります。わけもない図です。しかしながら、よく考えもしないで通り過ぎる道の傍に生い茂る草花のように、それらは土中に塗れ、いま此処、秋に顕現しているのでした。人間が石灰を入れ土の成分の中和を図ったところで、そんなものはたかが知れていて、つまりは自分の汗もたかが知れているのですが、夏の亡骸が土へ混ぜ込まれないと要は話にならないという事です。
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