熟れた悪意の日々/ただのみきや
 
小乗奈落下り

薄皮一枚
力ずくの力が萎えた両腕で
無垢な羽ばたきを模索する

庭園の苦行者は薄幸の煌めき
傷口は各々レトリックを備え
投げやりな否定で自らを慈しんだ

最初は小さな穴だった
風船をテープの上から針で突いたような
圧力から逃れ 吐息は殻を持った

穴は次第に大きくなる
途切れることなく奔放に 吐き出しているのか
異なる気圧に吸い出されているのか

目的と手段の融合 継ぎ目のない母子像
自らを標本として虫ピンで留め続け
せめぎ合い 裂ける 虚空の広がり

署名がなくても明らかだった
夢の中ですらまざまざと
己ただ己に取り囲まれて
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