喪失/こたきひろし
し草のようだった
だった筈なのに転職先で十年働いた
十年目に縁あって女と巡り合い結婚する事になり、また転職した
丁度バブルの全盛期だった
私は嫁さんの実家近くに引っ越した
その街の工場で働き出した
将来を見据えての決断だった
仕事と夜勤が辛くなってきた頃、同僚にトイレで話しかけられた
近くの工場で人を探している 何でも運送会社が新規に請け負う仕事らしいけどね 人手不足でなかな
か見つからないんだって、俺と二人でやらないか?勿論、給料はこことは違うし夜勤もないんだ
その話しに乗った私は転職した
それから二十余年よく勤まったもんだ
その間に夫婦して最寄り駅から東京に何度も出掛けた
東京は働く所じゃない
遊ぶ所だ
年に一度は西銀座で宝くじを買った
庶民の夢を買ったんだよ
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