キャンディ、シガー/竜門勇気
 
れることについて誰かと話し合いたい
新しいものなんてなかったじゃないですか、とか言われて
そうですか?みたいに答えるんだ

銭湯から若者たちがぞろぞろと出てくる
どうでも良さそうにビールの缶を手に持って
これからどこかへいくんだろう
ねぐらへ帰る方法を分かち合ってる
そのうちこの道を一人で歩けるようになるんだ
赤く暗い空の下は
ただただ光がないだけの場所さ
それでも迷わず歩けるようになる
きっとな
君らの一人ぐらいは

タバコに火をつけながら
ポケットの中の飴玉をさがす
出かける前にここにしまっておいた
コンビニエンスストアで買った飴玉だ
安くてたくさん種類があるやつ
最後の一個だから
どんなフルーツの偽物かなんて知らない
確かめなんかしないし見ずにポケットにしまったんだ

タバコの箱を握りつぶす
これが最後の一本だ
わたしは、ただわたしを、
あの情けない女の声を真似してみる
秋が近づいていた
白い息を置き去りにして歩く
がりがりと飴玉を噛みながら
タバコの自販機を探していた


戻る   Point(0)