夏のひかり/有邑空玖
いつだって、
手の届かないものを欲しがる、悪い癖。
あの光に過去を思い出そうとしても、
それは凡て幻です。
夏になれば、
夏になれば、
夏になれば、
夏に、ねえ、
永遠があれば良いのにねえ?
廃墟の中はひんやりとしていて、
水底みたい。
あたしは人魚姫のように、
目を閉じて青空を想うの。
閉じた世界の底でなら、
いくらでも夢を見られるわ。
あなたはあの時のままの笑顔で、
手を招いている。
揺れる秋桜。
鱗雲。
枯れた向日葵。
理科室のフラスコ。
薄暗い廊下。
ピアノ。
小さな絆創膏。
運動場の白いライン。
割れた硝子に太陽は光を反射させて、
水底のあたしを揺り起こす。
今日もまた辿り着けなくて、
錆びた鍵を投げ捨てる。
夏になれば、
夏になれば、
夏になっても、ねえ、
永遠なんか見つけられないのにねえ?
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