セノーテ/道草次郎
美しいと感じたものを美しいといいたい
全てはそれに尽きるけれど
その思いがどんなに強いとしても
なし得ないいろいろな理由が海のように拡がっている
海に喩(たと)えれば海にゆるされ人にも許される
そんな囁きに唆され
生かされて
託しが
あればこそぼくは
息がつげる
本当は
セノーテについて書きたかった
いつか書く
須臾(しゅゆ)のまに誓って
それまでは
いや
それからだってぼくは
海を信頼
します
セノーテとは
ユカタン半島の石灰層が
雨によりくり抜かれ
創られた
エメラルドグリーンの天然の泉のこと
その場所へ赴くのを断念する
そのことよりも
澱んだ
卑小さを今
想像の力を借りて
組み換える
水没した鍾乳洞へと
そうっとしのばせて行く心音の眼
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