死と詩と虫と/ただのみきや
ウが群れ飛ぶ畑
杖を突いた女が角を曲って見えなくなる
いつもの小学生の姉弟がスケボーをくねらせる
わたしは風を手繰り寄せる
意味のない木蔭と交差しながら
取りとめもなく規則性の捏造を模索して
衝動
夢が外へ開いて花は笑う
夢が何か花は憶えていない
理由を求める暇などなく
花は散ってしまう
言葉であらわせるものを
わたしは信じない
定義はひとつのマーカーに過ぎない
無数の印象の扉をくぐり抜ける
衝動だけが
生と死の間の薄闇まで続いている
わたしは安ウイスキーの小瓶に刺した
羊歯(しだ)の葉の緑を信じる
信じるという言葉を信じないまま
それ自体の美を追求した虚言を
自己愛の睦言を
《2020年9月19日》
戻る 編 削 Point(4)