あたかも 森が海を恋しがるかのように/るるりら
 
トイレに 貼られた関門海峡の写真
そのくせ 見る事のできない生まれ故郷


「もし そこにいるのなら返事して」母は言う
補聴器をしなければ何も きこえず
わずかに光だけを感知する あなたの手は
まるで森の木々が とおい海を恋しがっているかのよう

煩悶しかない日常
けれど、あなたは むかし
おさない私を 極端な怒りの人や悲しみの人から
あなたは まもってくれたのかもしれないね
怒った顔の人のことを、あなたは 十時十分だと言い
かなしみの人のことを、あなたは 八時二十分だと言った
喜怒哀楽を記号化して へっちゃらにしようと
してくれたのかも しれないね

もはや 
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