夢のものがたり/こたきひろし
穢れなき少女はとこしえに汚れなきままにいて欲しい
と切に願った
初恋の人ゆえに
木造のふるい校舎はぼんやりとした記憶の中に佇んでいた
雨が降る度に廊下の天井から水が垂れてきた
修理はされないままに、雨の日は廊下の至る所にバケツが置かれた
バケツが楽器になって音楽を奏でる
何だかそれが心地よくて
授業と授業の合間の短い時間に廊下に出て
廊下にぼんやりと立って聞くともなしに聴いていた
クラスメイトのおんなの子が一人
廊下に立って壁に寄りかかっていた
その時おんなの子は
誰にも見られたくない秘密を抱えてしまい それを必死に隠そうとしていた
困惑した表情は今にも泣き
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