振り返ること ?/道草次郎
提供することも試みた。必要な折衝や事務的な手続きもやり、運営の協力者も随時募った。
ぼくはその自助グループの開催に当たっての挨拶の言葉としてこういう事を言った。「ぼく達は、いや、すくなくともぼくは幼稚園児だ。何もかも一からやりなおしたい。そう考えたから自分はこうして声をあけたんだ」
むろんみんな黙ってそれを聞いていたが、各人思うところは様々であったことをぼくは後々痛感することになる。
もちろんある程度プライベートな雑談の場では、ぼくは、自分が彼女が欲しいからこの自助グループを立ち上げたに過ぎなくて、みんなもそうするべきであるというような大口も時には叩いたし、ハイデガーの『存在と時間』を読破したというだいぶ年下のひどく人付き合いが不器用な青年には、あらゆる具体的なことは排除すべきだし、どこまでも抽象的に生きることを称揚するよ、とのたまったりした。後でその青年とは一悶着があり訣別をしたのだが、そんなこともぼくにはじつは大したことではなかったように思う。
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この話の続きは次回にします。
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