振り返ること ?/道草次郎
がぼくの20代前半だった。一銭も稼がず女性とも付き合ったことがなかった。死と隣り合わせの日々であった。
父は既に死んでいたし、兄は遠くにいたし、母と二人実家暮しをしていた。母には散々迷惑をかけた。精神的な迷惑に比べたら経済的な迷惑は殆どないに等しいほど、毎夜のように母をさいなんだ。寝ようとする母を引き止めてしつこくいつまでも自分の罪深さについて延々と講釈を垂れたり、地獄とはどんなところか狂ったように朝まで呟き続けたりした。どうしようもなかった日々は千日ではきかないだろう。
そんなふうにしてぼくは生きてきた。それでも、死なずに生きてきた。だから、幼馴染の事など考えている心のゆとりなど無か
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