出入橋きんつば/385
稲荷神社の境内は
屋台の喧噪が過ぎ去り
散り桜がふりつもる
静かな春の時間に
鳥さえずり子ども笑い
週末のドライブで
いつもあなたがかけた曲
あのカセットはすり切れて
CDに買い換えてしまったけれど
まだ捨てずに持っています
あなたのいないこの世界を
生きることも去ることも
少しも怖くはない
いつもそばにいて
ちゃんと話ができる
習い始めたばかりの笛では
島唄は風に乗らず
方々に迷い惑って
躊躇いがちに舞い踊り
当て所なく砕けて
今日は出入橋へ寄り道します
ふたりの最初と
最期の味は
さっぱりと甘く
いまもなお
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