秋風遁走曲 他四篇/道草次郎
 
違いだった
お前がもっとも憎んだ人のほうが正しい
お前は負けた
働こう
生きよう
いけない
そうやって意識を
なくしては
いけない、
お前は破滅してはならない
お前は働くんだ
なぜ?
お前は苦しむ為にうまれた
答えも何もない
絶望すらない
比喩もない
苦しみだけがある
働くんだ
それだけだ
死ぬな


「誇大妄想」

世界は
烈しく批判されたくて
仕方のない
顔をしている
けれども
ぼくは
半生な卵
液体でもなく
個体でもなく
じつに
傷みやすい
世界が
ぼくを食べて
お腹を下さないのは
それは
世界の便意が
もう百兆年ほど
先だからに
過ぎない
のだ




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