秋風遁走曲 他四篇/道草次郎
 
「秋風遁走曲」

暗い気持ちで書いている
魚になって書いている
迷路を描いている
出口だけを描いている
胸に有り丈を沈めている
海の深さを見誤っている
雲を扇風機でながしている
雲は素直に流されていく

ひとつふたつと
数えるものが欲しい
指があるのに
数がない
あたまのなかは真っ白け
目の奥が痛い


どこへ行けばよいのやら
猫はまよったためしがない
心配は他所へ置いておこう
うさぎの瞳を見てみなよ
足りないのだから仕方がない
蜻蛉の交尾はほとんど曲芸
やる気が出ないどうしよう
やる気のある動物なんていない

{引用=一番ひどくやり込
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