古着屋さん/クーヘン
　

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コーデュロイと１０回唱えれば秋となる。
デュの発音、決して油断なさらぬように。


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古着屋のお兄さん、元気かな。
首筋に、五芒星の墨の入った。


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ＭＡ―１を着た男娼、今宵は鍵穴となる。
昨晩は確か、鍵としての役回りだったが。


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あの子のバーバリーのマフラー、偽物。
あの子の体育教師への淡い恋心、本物。


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名もなき海外バンドのツアーＴシャツ。
背面に、名もなきライヴハウスの列記。


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アメリカ村の三角公園で兄と待ち合わせ。
内角の和を求めながら、兄を待っている。


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また似たようなネルシャツ買っちゃった。
いまだに僕は兄の幻影を追い求めている。


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日々、僕は僕を着古してゆく。
これぞ一点物のヴィンテージ。


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死ぬことは体を脱ぐことなんだってさ。
脱いだ体、また誰かが着てくれるかな。


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さようなら、思い出の古着屋さん。
僕はあまりにも年をとりすぎたよ。

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