カサブタ/ホロウ・シカエルボク
 
いのちがありすぎる
言葉はひしめきあい
ぼくは
茎のねじ曲がった花になる
おぞましい受粉をして
土を黒く染める
あなたへ
あなたへ
いま
あなたへ
寄りつけるなら
まだ見ぬ地平へ
明日の話は限りない
寝物語ばかり
壮大に繰り返される
ほら
陽の当たらない裏庭
繰り返し見ていた
壊れた汲み上げポンプ
浅く埋められた飼い犬の死体
割れたコップと
錆びた
補助輪付きの自転車
雑草の中で
ふやけた過去のにおい
虫食いの子守唄と
ぼやけた誰かの顔
朝はまた疲弊しているだろう
あの窓から
こちらを見下ろしていたのは
凝固した石灰のような
そんな目で見下ろしていたのは
昨日の雨が滴り落ちる
腐り落ちた日差しの上に
いつかあの天井裏から飛び去った
蝙蝠の羽のけたたましさを
なぜか思い出していた
夏は終わる
触れられそうな陽炎と
ともに

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