夭折/ただのみきや
 
幼恋歌

暑さ和らぐ夕暮れの
淡くたなびく雲の下
坂道下る二人連れ
手も繋がずに肩寄せて
見交わすこともあまりせず
なにを語るか楽しげに
時折ふっと俯いて
風に匂わす花首か
永遠にも似たひと時を
惜しむにはまだ若すぎて
それでも小さな針のよう
予感を言葉に出来ぬまま
駅の途中のコンビニで
アイスモナカを二つに割った
どちらからでもないような
マスクのままでしたキスは
池に放した金魚のよう
大人になっても買えはしない
全て失くしてしまっても
ひとつカタカタ鳴っている
宝石箱のビー玉は
あのダイヤより澄んだまま




金型


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