ロックンロール治療薬/イオン
めた
それ以来ピアノには触れなくなった
娘は中学生のときに
吹奏楽部で音楽にまた殺された
部活の顧問にきつく指導されて
それ以来、音楽の話はしなくなったが
こんな歌を聴いていたのだ
私も就職すると
音楽で生きる夢は立ち消えて
ギターを中途半端にやめたが
五十歳を過ぎて指が痺れたことがあり
怖くなってギターをはじめた
音楽は治療薬にもなる
リビングで一杯飲みながら
アンプに繋がない生音で
中古で買ったエピフォンカジノを弾く
リッケンバッカーのコードを追ってみる
「ニセモノのロックンロールさ
ぼくだけのロックンロールさ」で歌は終わる
まねごとの傷跡を治療薬は時々痒くするので
ギターをかきむしるように弾いてしまう
キッチンのカミさんがウルサイと怒る
娘もキッチンに立ち寄るとカミさんに
チューニングが微妙に合っていないんだよねと
言って笑った
ふん、「ぼくだけのロックンロールさ」
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