李家の人々/ただのみきや
という遊戯で互いを相殺する
水銀の笑い声
壁時計の放心
羽根を切られたインコは下敷きになり
片方の鉤爪を表現者として舞台に残した
緋襦袢は湖面のように揺蕩っている
ひとつの母の皮を被り
二人は底なしの床の上
もつれ合う宿世も遺伝子も蛇のように
長すぎる触覚でその気に触れた
虫は鳴かずに共食いする
シャッターチャンス
制服姿の少女が夕空
虹に向かってカメラを構えている
背後わたしは
心でシャッターを切る
《2020年9月6日》
*李家の人々とは
1950年代 香港で性具の卸問屋として財を築いた
シニタガ・李と息子娘たちのこと
長男 ブルース・李
長女 ブロッコ・李
次女 メランコ・李
次男 エルビスプレス・李
家族全員が詩人だった その作品は現在一つも残っていない
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