森宇宙(改訂)/ひだかたけし
 
あららら

落ちて来る落ち来る
何匹もの昆虫が
下草の上に仰向けで
盛んに脚を動かして
兄は素早くその一匹を掴み
弟の眼前に突き出し言い放つ
[これがノコギリクワガタだ]
弟は驚き興奮しながら
そのイキモノに目を凝らす

)舞い舞い舞い
)渇き渇き渇き
)刻む刻む刻む
)記憶の砂漠を
)さぁらさら

黒光りしたそのイキモノは
長い鋸状の二本の角を
カシカシカシカシ交差させ
六本の脚を
粘り着くように動かし続ける
その圧倒的で精巧な存在感に
たけしはもう震えが止まらない

[の こ ぎ り く わ が た
 これが ノコギリクワガタだ!]

ナニカガ ノウリニ キザマレタ

  〇

言葉
声を身籠もり
身籠もる言葉は
響く宇宙また宙宇の渦
何かを何かを今の今も
ウミダシテイル ウマレテイル







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