危険な賭け/こたきひろし
 
思い返せば君をアパートで初めて抱いた夜
それは危険な賭けだったかも解らない

なぜなら
その時私は君の体の中に押し入り
いっとき体を制服したかっただけで
それ以上の感情の昂ぶりには至らなかったからだ

なのに私は何度も欲望に前方を見失いながら
愛してる
アイシテル

うわ言のように口にしたのだ

それはとても便利な魔法の呪文


愛してるアイシテル
を繰り返し囁やけば
全てがゆるされてしまうと言う
誤解と錯覚は
自己に暗示を呼び込んで
いつの日か砂漠に揺れる蜃気楼

愛情とは
奇跡がもたらした
綱の上の倒立歩行か

思い返せば
君を初めて抱いた夜
あの肉体の昂ぶりが愛情へとすり変わる
迄の過程に
迷いに迷い続けた葛藤




戻る   Point(1)