夏の夜中/由比良 倖
 
宇宙の果てに、ひとりでいれば、
虫の音が、眼の奥底に浸みてくる。

  空には人の気配は無くて、
  星も何にも語りはしない。

虫たちは、頭の中の波打ち際で、
幻みたいに、光ってる。

  それは僕を安心させず、
  不安にさせもしない。

波打ち際に、寄り集まって、
鳴きあかしてる、虫たちの声。

  その声は僕の感情に、
  何の関係もない。

夜中、僕の眼もまた、
昆虫みたいに、光ってる。

  宇宙の果てで、宇宙の果てで、
  幻みたいに、光ってる。
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