ここは家ではない(らいこう28)/れつら
 

ここは家ではない

言葉には表と裏がある
場合によっては厚みもある
そこここに置いてある
立て掛けてもある
一見なにもない道で
時折躓いてしまう、
あれは言葉に躓いているのだ
その鋭い角で殴られたりもする
やにわに雨風が叩きつけ
ぶつかり合って変形する
そういうときは、いつも向かい風で
そうでないときは、風に気づかない
ここは家ではない

でこぼこになった軒下で
雨が過ぎるのを待つ
誰かが駆け込んでくる
その人をあなたと呼ぶことにした
ふたりともひどく濡れている
くしゃみをして、風邪をうつし合う
何度も、それを繰り返す
おずおずと、しかし、執拗に
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