系統樹/宮内緑
鐘の音が夕べを渡る
この頃は少し晩が早まったと
ありふれたことを伝え合うわたしたちに
歳月がつもりつづける
わたしたちがともに埋もれないのは
花を供えるものが必要だから
あけび色の空は夜に沈み
移ろいが蟋蟀たちの一生をせかす
わたしたちもやがて百日紅の花を忘れ
足早に木犀の回廊を過ぎるだろう
わたしの最期をわたしが怖れないのは
見送るものたちがわたしの殆どであるから
夢がやみ憧れがやみ星のぼる
さみしい狢が木群をさ迷い
去った愛を掘り返しては土をはらう
埋葬しなおすたびに星は揺れて
これは土葬の名残で六角塔婆といいます
花柄がついているから見分け易いで
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