予兆 ―プロフェシー―/岡部淳太郎
 
っていたから、彼等はこのようなもっと多くの人々が悲しむような状況で人々よりも敏感にそれを感じ取り、そこからやって来るであろう何かのことを感じ取れるのかもしれない。
 だが、繰り返し言うが、彼等のような存在はあくまでも少数であり、少数であるがゆえの無力感にさいなまれてもいた。多くの人々はこんなものはいずれ終るとたかをくくるか、この状況がもたらす疲労ゆえにいらだって他の人たちを攻撃したり嘲笑したりしていた。そのどちらであっても、この状況の先にいずれ来るであろうもっと大きな何かのことなど考えておらず、いまここにしかいないのは変らなかった。人々は何も愚かなわけでもなければ悪いわけでもないし、人々と彼等の
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