予兆 ―プロフェシー―/岡部淳太郎
だ。また、多くの人は彼等を胡散臭げな眼でちらっと見やるとまた視線を落として溜息をつき、自らの鈍感さの檻の中へと逃げこんではそこを安住の地と定めた。予言者または偽予言者とも呼ばれる彼等だが、何も彼等は特別な存在などではなかった。すでにこうなってしまった僕たち、早くも悲しみと疲労に捉えられてしまった僕たちの中で、ほんの少しだけ敏感で、ほんの少しだけ風のにおいを読み取るのに長けただけの、他の人々と同じようにこの地上に生きているただの人に過ぎなかった。もしかしたら彼等はこの状況がやって来るずっと前から、いや、彼等が生まれて間もない幼い頃から既に悲しんでいたのかもしれない。そのような悲しみをあらかじめ持って
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