予兆 ―プロフェシー―/岡部淳太郎
もっとひどい明日をもたらすものなのか、それともいまのこの状況を振り払って見たことのない幸福な明日を見せてくれるものであるのか、誰にもわかっていない。だが、その予兆の中にある者たちはみな一様に、その「何か」はそうありきたりのものではないだろう、やって来るのは最悪か最良かのどちらかであって、中途半端なものではありえない、そうでなければこんな予兆に捉えられはしないと思っていた。いずれにしても僕たちは、そのやって来るものの前にすでにこうなっており、それはまだ途中の段階でしかないのだということだ。
それを感じ取れる人の数はそれほど多くはなかった。ある者は彼等を予言者と呼び、別のある者は偽予言者と呼んだ。
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