厭離穢土、欣求浄土/飯沼ふるい
 
ゃいでいる。俺もあんなふうにされる
のか。宙に放られている俺のすべてが
宇宙人の知覚にかかっているなら、ジ
ジイのすべてはだれだったんだろう。
俺は健気に塀を越えて、さよならも言
わず(真つ赤な動脈を流し込み、自ら
を荼毘に付していった。涼しい。親友
がひとり亡くなったら、こんな気持ち
になるのかもしれない。

煤や灰やが螺旋に舞い上がり俺を祝う。
尋常ならざる力によって上着も下着も
透けていく。空を泳ぐ空想はよくした
ものだが、裸になるのは及びもつかな
かった。覚えたての自慰を(時間をか
け、終えたときの気分だ。大気が揺れ
んばかりの重く激しい爆発が足元から

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