厭離穢土、欣求浄土/飯沼ふるい
 
というんだろう。あぁ、血
も涙も走馬灯もちんぽの痒みも枯れ果
て、劇的な意味もなく(だから最期と
も言わぬが、地球の自転と宇宙の膨張
との延長線上の出来事として(ひとつ
の記述をのこしておえるとする、連れ
去られていく視線から(空と一緒に翔
んでいかうとする、遺骨まで遠く、拡
がり続ける(あらゆるものの、孔で真
っ黒に裏返り(ひとつの可能性として
の、“ここ”から絶えようとしている、
だれかの(お前の、
ために、(真名を、
聖歌を。

けれど彼はその一つも知らなかった。
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