フロントガラスにちいさな蝶が止まった/ただのみきや
炎の渦から一人出て行った
一粒の涙に溺れた時代の反響音がカルタのように捲り上り
いっせいにモザイク化する
沈潜した子供の頑迷さは老いて再び発芽する
大人とは一つの幻想なのだ
冬虫夏草と溶け合う蝉のように退行に退行を重ね
太母の胎に取り込まれ水底から泡の行方を見上げている
迷路の入り口に立って わたしもまた一つの迷路であり
辿り着いた場所が何処であってもそこが
決して辿り着けはしない場所への永遠の憧れと
全ての始まりを繰り返し夢想させるだけの終点なのだと
睨むように見返してやった
ああ耳元で鐘を突かれても気づかない兎の耳を往く亀
狂おしい木霊で螺旋をのろのろ滑り降りながら
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