宝石/道草次郎
 
、今、輝きを放っているのはほんの数冊だけ。でもそれだけで十分なのだ。

誰もがみな自分の小さな宝石のことを愛している。さっきのぼくがちょうど『ぼくが電話をかけている場所』を愛したように。そのことを今は微笑ましく思えるし愛おしくさえ感じられる。

本を読み終えたあなたはそっと瞼をとじる。何者にも邪魔されないゆたかな時間がそこにはある。それから、キッチンへ行って誰かのために美味しい紅茶でも淹れようかな、そんなことを考えるひとときも。

本があることはやはりうれしい。








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