夢幻の話/道草次郎
宮崎駿がそっと自分だけに耳打ちしてくれた或ることについてだった。それは、宮本武蔵とポルコ・ロッソの決闘を描いた素晴らしく上手い線描画の隅に、自身がこっそりカメオ出演しているのを仄めかすような内容だった。
「朝起きた人が当たり前に思うこと」
目を覚まして暫くは不思議な感覚にとらわれていた。朝が来て、また一日が始まる。だか、起床して間もないこの間(あわい)のような時間に世界は心許なく不安げに震えていた。生存は喉の奥の辺りで覚束無げによろめき、グラグラとした眩暈がそれに取って代わったかと思うと、すぐさま底の定かでない鈍い動揺感が襲ってきた。その数秒間、生死はじつに不確実
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)