人は哀しみの器じゃなくて/こたきひろし
てきたのだ。
家族の生活の為に家のローンの返済の為に。
その為に彼女は結婚資金を蓄える事ができなかった。
申し訳ないと言う気持ちにたえず苛まれながら、反面いいように利用してきた。
父親としては完全に失格していた。それどころか、もし娘に良縁があって知らない男に持っていかれたらどうしようと心の底で不安になっていたのだ。
娘の恋愛相談にのれる父親の器になれる筈はなかった。
私は心の汚い父親である。
私は自分の都合しか考えられない夫でもあった。
娘は五年近く付き合ってきた男と上手くいってないと
告白してきた。
彼女の目からは堪えきれなくなったか涙が零れて落ちた。
夜
悲しみの詰まった器になって
最愛の娘の泣く姿に
父親は狼狽えるしかなかった。
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