メモ/はるな
 


それでも、たちどまってはいけないのだ。

いろんな手から、お金をうけとる。
おおきい手からちいさい手、ひらたくて涼しげな手や分厚く力強い手。細い指、太い指、さまざまな長さの、さまざまな色の、まっすぐや、まがっていたりや、皺皺だったりつるりとしていたり。おばあさんやおじいさんの手はすこし震えてやさしい。そうっと、祈るように見えることもある。「ごめんなさいね」と言いながら、ゆっくり、いちまいずつ出される硬貨の鈍い光を数える時間が、わたしは好きだ。
してあげたこと、ひとつひとつ執念深く数えるより、「ひとつも覚えていないわ。」と笑う言葉のなかに修羅が住んでる。過ぎたこと同じように遠く、それでいてくっきりとかなしい。それらが刻まれて、刻まれて、わたしの手のふるえもいつかもっと優しくなりますように、なりますようにね。と思うとき、指先は冷えて、やっとすこし眠い。



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