ある夏の光景/
ひだかたけし
光溢れる夏の午後
庭の梅の木が微かに揺れて
三才の僕はその瞬間、
〈じぶんは自分なのだ〉と不意に気付いた
なにものにも替えられ得ない〃この私という存在〃
その認識が僕を稲妻のように打ったのだ
そのとき世界は美しく揺らめき
熱風とともに戯れていた
そのとき世界は静まり返り
優しい無関心に輝いていた
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