無題/朧月夜
のないように、つぶやく。
「キミ」はいつ帰ってくるの?
それとも永遠に帰ってこないの?
氷点下の心が、真夏のなかにもあり、
それは、決して拭えない穢れで、
ボクを磔刑にする。
そのままで良い。
明日晴れたなら、
今日晴れたのと同じように、
ボクはボクの想いを繰り返す、
戻って来ないものはもう戻って来ないのだと。
そして新しく始める、同じ毎日を。
繰り返しでもない、それでも限りなく似通った日々を。
翼があれば、
ボクの心を吸い取った空へと、
近づけるだろうか。
それともそこにはやはり境界があって、
ボクの手を拒むのだろうか。
いつしか、それは透明になって、空と一体化する。
掴もうとしたボクの手は、もうボクのものではない。
そして「キミ」と呼ばれた存在も、
マンデルブロの集合のように、
追いかけても縋れない、微細な世界に紛れ込んでゆく。
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