桜姫/
田中修子
呟く
ぬるくなったノンアルコール・ビールがまとわりつきながら
胃の腑に落ちていく。
川底には、ひとを愛しきれず泡にもなり切れなかった
こわされた人魚姫たちの死骸が重なっているから
一緒に踏み入って、死骸から鱗をちぎりとってやろうか。
こんなになってもまだ、人になるのがあの子らの想望ぞ。
剥いで剥いで、清めの塩みたいに投げたら、空に青金がひろがって
あなたは耐えきれずに、桜の花びらになってくずれていった。
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