原紙/星 ゆり
いちまいの余生に見まがう、あの頬の
夜のふるいにかけられた白き無題よ
こめかみに走る雛鳥、点描にひかりが染みこんだ
その一つひとつはめもりのない朝
捨てられないものを増やした膝を
いつか深く植えるための、
どちらにしろ、すきないのち
牛乳を注ぎ、ひとはだになった路地で
優しさの左右を弁明し続ける
片方を忘れても、正すことのないように
それでもはじめからマス目を数えなおす
思い出の背綿
迂回した日暮れ
わりきれぬ森
ひび割れた胸におちた小さなピアノと
抱擁の水路
あの製紙工場の明るさの向こうでは
どちらにしろ、すきないのちが泣いていた
おまけでつい
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