キャラメル・パンチ/星 ゆり
 


森永製菓のエンゼルマークが見つめる先で
ペコちゃんの舌先をチャネリングするアインシュタイン
10年も先の新商品とは廃棄予定の甘みの中にある


往来、口笛はなぜ遠くまで聞こえるのか
待ち構えて100年 喫茶の冷めたココアを飲むアルプスの老婆


台詞とは練習しないためにあるもので
「磯野、野球しようぜ」とテイク13のドラえもんが
未来に残業があることに気が付く


ありあわせや自己流、空調完備の絶望の中で
頬がなくなるまで噛み合わせたいよ、自給自足の役回り


天使の矢が刺さる朝焼けのキャラメルで
ジャイアンが喧嘩に負けて完結だ
セブンイレンで風味絶佳の森永を
夜勤明けのドラえもんに奢ってもらう


口笛も音痴な道中の先で
やっと喧嘩相手が来たのだと全員が口をつぐみ
腕をまくってクララが新発売のプレミアムモルツを飲む


老婆同士、化粧直しをしている反復の午後3時
敵と味方は美しく取得した力演技へと向かう




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