傘の下に降る雨/こたきひろし
暮らしの貧しさは容易に数字に出来るけど
人の心の貧しさは容易に言葉や文字には括れない
日々の仕事に心底疲れながら
休日にそれを癒せない
そこには命の貧しさが潜んでいるからだろう
平凡でかまわない
それ以上を望んだら
なりふりかまわない生き方しか出来なくなるだろう
が
現実はその平凡さえ手に入れるのは難しい
「次の休みには家族で何処かに出掛けようか」
妻と二人の娘に提案してみた「海 山 川?どこがいい?」
訊いてみた
すると長女が答えた「自然のある所なんかいつでも行けるわよ」と言われてしまった
そんな答えは聞きたくなかった
苛立ちを抑えながら それを極力悟ら
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